Tetsu Inoue

Organic Cloud
FAX
organic-cloud-aw.jpgアンビエント史上に残る名作。
1〜3曲目までダークにディープに、暗雲が立ち込めているような空間が広がる。
4曲目から光が差し、最後の曲で一気にホワイトアウトする。
一曲一曲で聴くよりもアルバムを最初から最後まで通して聴いてみると、1冊の本を読むように物語を味わうことができる。
最後の曲は細かく刻まれたハットと間隔のあいたキック、浮遊感のあるシンセがで全体が大きく前へ進んでゆくような、有機的な表現となっていて、テツ・イノウエ独特の手法でもある。

ここまで深い世界観を表現する日本人はそうはいない。

2004年09月14日: mikado

Zauberberg / GAS

cd_gas01.jpg涼しくなってきてからの、私のオヤスミミュージック

Zauberberg / GAS

この曲を聴きながら、ゆったりストレッチをして眠ると深く深く眠れます。
音響、ズブズブ系。GAS中毒になります。
一時期、音響系にはまっていたときに私のお気に入りCDのほとんどが同一人物の作品と知ったときなんだかまんまと乗せられたような気分になりました。
Wolfgang Voightの手の内で転がされっぱなしです。ダイスキ☆

 
Zauberberg / GAS
”MIKE INK” ”LOVE INC” ”Digital” ”All” ”Grungerman” ”M:I:5” ”Mint” ”Studio 1” ”Wassermann”などなど沢山の別名をもつWolfgang Voightのアンビエント名義GASの2nd。
98年発 Mille Plateaux

2004年08月30日: yukarhythm

Thom Brennan

Satori
Zero Music
TMB music
satori.jpgランドスケープアーティストでもあり、ナチュラリストでもある孤高のアンビエント・コンポーザー、Thom Brennan。
大手レコードショップはもとより、専門的なお店にすらお目にかけることは無いが、彼の崇高で聴く者をメンタルハイにさせる、それでいて温かみに満ちた作品は他に無いだろう。
特にこの「satori」。日本語の「悟り」にちなんだタイトルどおり、最後まで聞いた頃には幽体離脱していること間違いなしです。まあそれは冗談ですが脳細胞はかなり活性化されているははずです。
71分で1曲というスーパーミックスは、すべてシンセサイザーの和音と様々なノイズによる途切れの無い構成。ゆっくりと変化する要素は瞬間的には音楽というより大自然の営みを表す空間といえそうだ。
この作品、「悟る」かどうかは個々の聴き方にもよりますが、あるステージには連れてってくれます。

2004年08月10日: mikado

Biosphere

Cirque
Touch
cirque.jpgこれはかっこいいです。包み込まれるような暖かい上音と、少し温度の低いリズムの独特な空間構成。Biosphereはノルウェーのゲイル・イエンセン(Geir Jenssen )によるプロジェクトで、KLFが話題を集めていた時代から活動していたアンビエントの老舗的存在。
想像力を生み出すための音楽という前提のもと、様々なコンセプトによる楽音を生成しつづけている。アンビエントファンなら、このBiosphereは聞いたことがある人も多いはず。
この「Circue」は、前半ゆったりとした落ち着きのある感じで、まずはここで気分が良くなる。中盤では少しコンセプチュアルな音でクールダウン、後半ではドラムンベース調でスピードを上げていく。ミニマルな手法を好み、あまり極端にテンションを上げたり大きな変化を作らない。湿潤度40%といったところか。Biosphereの数ある作品の中でも、最もフェイバリットな作品をまずはご紹介。

2004年06月14日: mikado

Ian Boddy

Aurora
DiN
aurora.jpgこのCDについて語る前に、私がアンビエントについて系統分けするときよく使わせていただく言葉をご紹介します。
単純ですが、「乾き系」と「濡れ系」です。
「乾き系」はあまりエフェクトをかけないで、音一つ一つで空間を表現し、割とモノトーンな感じです。よく音響系といわれるジャンルでしょうか。それに対して、「濡れ系」はエフェクトをかけて元の音がなんだかわからないが全体的な雰囲気で表現するというもの。シンセでフィルターかけて曲げてみたり、ディレイを多用したりという具合です。ミックスマスター・モリスやピート・ナムルック等をイメージしています。あくまで私が勝手にカテゴライズしているだけです。
で、このCDは「濡れ系」なのです。ここ数年、音響物が流行っているようにも見えるなか、こういったものは古いアンビエント(アンビエントという言葉自体古いと言われるかもしれませんが)として飽きられてしまっていたのですが、だからといって廃れていくわけでもなく、またこういうものを本当は好きな人がいっぱいいるはずなのです。
このIan Boddyの"Aurora"は、曲がったシンセやディレイ効果で存分に濡らし、目を閉じて聞けば、北極の光のような冷たくも暖かいイマジネーションと宇宙の波動を感じさせるエネルギーが見事に表現された、聴き応えある作品と言えます。
アマゾンで購入→Aurora

2004年06月12日: mikado

Brian Eno / Peter Schwalm

Drawn from Life
Virgin
B00005AKNC.01.LZZZZZZZ.jpg2001年6月にリリースされたブライアン・イーノの最高傑作。今までのイーノの作品の中でもっとも優れているし、なによりも音がよい。音楽でこれほどまでに個の世界を表現し切れるものかと驚くほど、イーノの世界が詳細にわたって構築されている。これを聞いて心地よいと思わない人間はきっといないと思う。3曲目の”Like Pictures Part #1”では、女性の声をボコーディングしているが、これがまたとてもキモチイイ。なお、イーノはSFX映画「砂の惑星」で声の特殊加工として参加していたこともある。クラシカルな要素をもちつつ現代的な音響技術と繊細なメロディー、そしてストイックで憂鬱な雰囲気はイーノならではの空気感。やはり一家に一枚。

2004年05月24日: mikado

Vidna Obmana

Title: Crossing The Trail
Label: Projekt
coverこれはやばかったです。VidanaObmanaという人はトライバルなネタが多いのですが、ニューエイジにありがちなイージーリスニング系のトライバルとはわけが違います。ミニマルなパーカッションの繰り返しの上に、徐々に上音が変化していつのまにか音の渦に巻き込まれます。曲そのものがまるで生きているかのように有機的です。そしてハーモニクスにおける実験性をいつも心がけている彼のシンセワークは時には天国であり時には地獄のようなビジョンをつくりあげています。

1 Encountering Terrain
2 Trail Dwelling
3 Forest Arrow
4 Mission Ground
5 Esoteric Source, The
6 Giant Traveller, The
7 Splendid Place, This


2004年05月16日: mikado

Tetsu Inoue

Ambient Otaku
AMBIENT WORLD/FAX (GERMANY)
aw.jpgアンビエントオタク。タイトルにオタクという言葉を使うからにはやっぱりマニアックな音調でノンリズムで退屈で自己満足の世界かとおもいきや、そこはテツ・イノウエ、バランス感覚というものをもっていてオタクでなくてもとても聴きやすいし何度聴いても飽きない。クリエイティブな作業しているときなどアイデアが浮かびまくり。想像感覚がとても刺激されます。4曲目の”Holy Dance”などは極力低音を抑えリズムが背景化していて、代わりに気持ちいメロディーと快音が全面に鳴り響いている。全体的に内容が良い。これぞアンビエントの真髄!?
間違いなく一家に一枚版。

01 karmic light
02 low vibration
03 ambiant otaku
04 holy dance
05 magnetic field
cd 72:27:57

2004年05月14日: mikado

Harold Budd / Hector Zazou

Glyph
Crammed Discs
glyph.jpgHarold Budd はブライアン・イーノなどと共演することでアンビエントいうジャンルを作り出したキーパーソンの一人。ピアノ奏者として室内楽的指向をベースに持ちつつ極端にシンプル化された曲構成手法は美しく、詩的な意味合いを感じる。アンビエントは今でこそ死語といわれるがチルアウトといわれるよりもっと明確な意味が含まれていると思う。アンビエントは「周囲の」という意味が割り当てられてるがそれを音楽に当てはめると空間的な広がりのある要素をもつ音楽と解釈される。Harold Buddのピアノはまさに空間を感じさせるアンビエントだ。一方のHector Zazouは民族楽器やボーカルを起用したトラックメーカー、アレンジャーとしてビル・ラズウェルなどと比較されることが良くある。91年に坂本龍一などとコルシカ島の伝統歌謡をフィーチャーしたプロジェクトCDは大変興味深いところだ。
その二人が織り成す空間はとても広くて深みのある世界になっている。

ちなみに坂本龍一などとコルシカ島の伝統歌謡をフィーチャーしたプロジェクトCDというのは「LES NOUVELLES POLYPHONIES CORSES」('91)といって、主な参加アーティスト は、RYUICHI SAKAMOTO / IVO PAPASOV / STEVE SHEHAN / LIGHTWAVE /
RICHARD HORWITZ / JOHN CALE / JOHN HASSEL / MANU DIBANGO
となっています。
坂本龍一はピアノで参加しています。

2004年04月17日: mikado

Saul Stokes

Fields
Hypnos
hyby-ss-f.jpgシンセサイザーのみで曲を構成し、深遠な世界観を表現するチルアウトコンポーザー。
チルアウトレーベル"Hypnos"からの1作目「Abstraction」ではノンビートを展開していたが今回はダウンテンポの心地よいアンビエントエレクトロニカ。心地よい音の中に時々拍子抜けするトーンや音は彼独特の隠し味なのか、とてもはまりやすい。彼は自分のツールであるシンセサイザーからクリエイトしており、シンセサイザー製作業界からも絶賛されているほど。いってみればシンセオタクなのだろう。飾らないトーンはそんな彼の独特な世界観が素直に表現されているのだと思う。

2004年04月08日: mikado

Vidna Obmana

Subterranean Collective
Projekt
sc_v.jpgVidna Obmanaはベルギーの“ダーク“シリーズ、Projekt、hypnosのレーベルオーガナイザーでありコンポーザー。トライバルな音と深い包み込むようなシンセの反復を基調としていて、全体で一つの曼陀羅のような宇宙観を作り上げている。スティーヴ・ローチの弟子でもある彼はアメリカ、ヨーロッパのアンビエントシーンを牽引しているといえる。Robert Rich やAlio Die等ともコレボレートする。Vidna Obmanaの名前はセルボクロアチア語で「optical illusion/光学的錯覚」というらしく、あらゆる種類の知覚のひずみをオーディオにおいて実現させることを試みている。

少しづつ変化を加えていくシンセサイザーにどこかへ向かっていくような連続性を持つ反復リズムは、時に恐怖感、興奮、喜び、悲しみ、不安を呼び起こさせる。
これはミニマル・アンビエントと呼んだらいいのだろうか、とにかくここまで作り手の感情や念がこめられていて、聞き手にある一定ではないビジョンを見させる作曲家はいないと思った。

2004年03月02日: mikado